田舎の村から東大へ行った男

林田学は、とにかく努力家でした。
小学生の頃は、特に周りの子供たちと変わったところはありませんでした。
ちょっと早熟で、物知りな子供だな、という印象を大人から持たれるくらいだったのです。
彼が明らかに特別な人間だということが分かり始めたのは、中学生の頃です。
中学校に入学して、いきなり最初の学力テストで彼は学年上位5位以内に入りました。
今までは、のほほんとした田舎の小学生たちにとって、こんな風に順位付けされることなどなかったのです。
それが突然、誰がどの位置にいるか分かるようになってしまいました。
周りからだけでなく、彼は自分自身でも、「自分は特別だ」と思うようになっていったのです。
そのテストで、彼の中で何かが変わったようでした。
「目覚めた」と言った方がいいかもしれません。
「1位をとればもっと特別になれる」彼はそう思いました。
そして、もともと努力家で何事にものめり込みやすいこともあって、次回からのテストでは学年1位を取るようになりました。
それ以来、中学校を卒業するまでずっと、不動の1位に君臨し続けたのです。
そして彼は、その田舎の中学校の中でたった一人、都内の有名高校を受験し、合格し、その後は当然のように東大に進学しました。
地元の田舎の仲間たちの間では、彼ほど優秀な人は誰もいなかったものですから、彼が東大に行ったらしいという話は瞬く間に広まりました。
そしてみんなが口をそろえて言うことには「林田学は特別な人間だった」ということです。
実際には子供のころから特別だったわけではなく、彼の努力の賜物だったのですが、誰もが彼は特別な人間に違いないと思っていました。